「一場の夢と消え」松井今朝子 文芸春秋
近松門左衛門の一代記です。
京で公家侍の家に生まれ、武士になれずに京の芝居町でうろつき、芝居の物書きで名前を売り出す。
浄瑠璃の詞章、歌舞伎の筋書き、次第に名を挙げて行く。
京では坂田藤十郎一座の座付き作者としてあり、大阪では竹本座の人形浄瑠璃に携わる。
曽根崎心中で大当たりした。
京の興行主は竹屋庄兵衛、竹庄。大阪の興行主は竹田出雲。
近松門左衛門と名乗ったのは、京の近松寺で寺男をしていたことがあるからで、門左衛門とはどこから引いてきたのやら。
大阪に出て、曽根崎心中、国性爺合戦、心中天網島、女殺油地獄、これらはエポックメイキングな出し物として、小説に書き込んであります。
坂田藤十郎、市川團十郎、片岡仁左衛門、はるか先祖の名跡が出てきています。
書かれている時代は、徳川綱吉から吉宗の時代、赤穂47士の話題から緊縮が過ぎて興行受難の時代まで。
「異にする」の正しい読み方を知ってる? 約4割が「いにする」と誤読
https://sirabee.com/2024/08/30/20163334922/
ニュースサイトしらべぇのスレッドです。
わたしも「いにする」と読みました。
あれ、待てよ、わざわざ問い掛けるということは、そこで「ことにする」と読み替えました。
それで正解です。
ひらがなの「ことなる」は漢字の「異なる」と同一です。
漢字の「異なる」を使わずに、ひらがなの「ことなる」を使っているのだ。
それが普及して、「ことなる」は通用するのに、「異なる」は忘れ去られてしまったのだ。
その指摘に、なぁるほどぉ、ガッテン、ガッテン。
「オリンピックを殺す日」堂場瞬一 文芸春秋
語り手は東日スポーツのベテラン記者宮間、話しを繋いでいく役割なのだ。
次のオリンピックが某都市で行われるのだが、近い日程でぶつけてくるスポーツイベントがあるらしい。
現役を引退したトップアスリートで作るSHQ(SportsHedQuarters)と巨大IT企業ネイピアが、新しいワールドスポーツ大会「ザ・ゲーム」を開催するらしい。
趣旨は、スポーツマンの間でオリンピックに違和感を抱くようになったこと。
オリンピックはスポーツ貴族にリベートの金が乱れ飛び、広告代理店が運営を握り、テレビネットワークの買い取りにひれ伏している。
無観客で、テレビ放送なく、インタビューなく行われるイベントなのだ。
インターネットで動画を提供する。見るのはそれに限られる。
マスコミも会場内に入ることなく、一般人と同じ視点で見ることになる。
宮間は探る。スポーツOBの伝手を探り、アメリカのSHQ、ネイピアに接触し、次第に真相に近づいてくる。
オリンピック側はどうするか。
それは全く書いてない。
第1回のザ・ゲームは好評のうちに幕を閉じた。
ほんとにオリンピック側はどうするのでしょうね。
「日本語の冒険」阿刀田高 角川書店
これはエッセイだろうなぁ。起承転結があるわけじゃなし、小説ではないよね。
10篇の短文、主人公はそれぞれ違う。つまりは、誰でもええのだよ。普遍的なお話しなのだ。
いろはかるた、和歌俳句50首、幼い日の童謡、漢字を絵にする、クロスワード、日記:今日一日の良かったことだけを書く
残り4篇は、一言で括るのは面倒だ、読んでもらうしかない。
コラムにしては文字数・ページ数が多いのですよ。
エッセイのように心打つ狙いがあるわけでもない。
初出は[デジタル野生時代]に第5号から第14号まで10篇書かれたものです。
モニター上で人目を惹くには特殊な勘所が必要だそうです。
それを経た上での書籍化ですから、いわば、折り紙付きなんです。
最近のコメント