大江戸人情花火
「大江戸人情花火」稲葉稔 講談社
打ち上げ花火をほめるのは、鍵屋、玉屋のかけ声と決まっています。
そこのところに注目して、花火師の世界のお話しを作ったものです。
鍵屋の手代で職人に、おまえ、暖簾分けしてやろう、事情があってねぇ、息のかかった花火屋がもう一軒ないと、お上から目を付けられるのだよ。
この降って湧いたお話しには裏があります。
さらに、その裏があります。
それはともかく、新しい店はなんとか頑張らなくちゃならない。
危うく潰れる寸前のところです。
ちょうどうまいことに大店を退職隠居した番頭が働いてくれることになりました。
そこから、店が盛り返し、隆盛になっていくところは、読んでいても気持ちがええ。
大店の旦那になると、浮気のムシが湧いてくるものなんですね。
このあたりは読んでも読みづらいし、おかみさんに同情が湧いて、ページを飛ばして、先へ進みたくなるところです。
子供に事故があって、浮気も終わり。
本家の鍵屋を越えて、玉屋の評判が上になっていきます。
玉屋が出火しました。
花火屋が火事を出しては、所払いの処分は止むを得ません。
ほんとは、玉屋の職人がねたんで、放火したものなのです。
そこは黙って処分を受ける、ま、そんな結末です。
似たようなお話しの運びに、山本一力の一連のシリーズがあります。
どう違うか、山本一力の作品には悲劇はないのです。
常に、終わりには、将来は洋々として希望を持って本をたたんで置けます。
これは悲劇で終わる。
歴史では、玉屋は鍵屋から分家して、出火して廃業する、その事実が残っているから、仕方が無いことです。
稲葉稔が悪いわけじゃない。
鍵屋は、今でも存続して、花火を作っているのだそうです。
« 香港は12月でもまだ冷房 | トップページ | 怪しげなCDソフト »
コメント