「プラチナタウン」楡周平 祥伝社
大手の総合商社に勤める主人公は、上司の機嫌を損ねてしまいます。
部長職を解かれて、子会社に行くしか道はなくなります。
ちょうどそのとき、小学校からの同級生が訪ねてきます。
町長になってくれんかい。
今の町長が放漫で、不必要な投資を繰り返し、財政再建団体寸前の状態になっているというのです。
同級生は町役場に勤めているのです。
話しを端折ると、結局、町長に立候補し、無投票で就任します。
町長についてみると、聞いた以上に財政は危うい、財源もままならない。
ここからは一気にビジネス小説の展開となります。
工場誘致にと、造成した空閑地が3万坪ほど寝ています。
20年以上にわたって寝たままです。
ここへ老人健保施設を誘致しよう、土地は無償で提供しよう。
足腰が丈夫なうちは通常の生活を過ごしてもらおう。
寝付いたり、具合がわるくなったら、介護の手を差し出そう。
在職していた総合商社に話しを持ち込んで、興味をもたれた。
一挙に進展して
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「ということはマックス7450人もの入居者になる可能性があるということですね」
「理論的にはそうなります」
「これだけの施設を建設しても、土地はまだ埋まりませんね」
「勤務者の居住施設を整えなければならないでしょ。今回建設する施設は介護付有料老人ホームなんです。これには厳密に基準が決められていますからね」
「確か、生活相談員、介護・看護職員、機能訓練指導員、計画作成担当者、管理者を置かなければならなかったんでしたよね」
「生活相談員は常勤一人以上で、利用者に対する割合は百対一ですから、最大七十五人。看護・介護職員は、要介護利用者三人に対して一人ですから、三百五十人。看護職は五十人以上の施設で一人プラス利用者に対して五十対一ですから百五十人。機能訓練指導員は一人以上ですが、これほどの規模なら最低二十人はいるでしょう。計画作成担当者は百対一ですから七十五人。管理者は事務も含めてやはり二十人はいります。これを総計すると六百九十人」
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利用者とサポーターを合わせて八千人以上の人口が膨らんで、小学校中学校でクラスを増やさねばなななくなる、町の商店の売り上げは増える、ええことばっかりです。
「Cの福音」でのあの悪い悪い朝倉恭介はどこへ行ったのやら。
国際サスペンスで売り出したのじゃなかったのかしら。
がらっと変わった作風で、ハッピーハッピーな将来明るいお話ですが、こういうの、好きですよ。
みじめで絶望的なお話しを拡げてくれても困ります。
このように明るい未来がある、と歌い上げてくれるものがあると、安心できます。
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