マネーロンダリング・ビジネス
「マネーロンダリング・ビジネス」志摩峻 ダイヤモンド社
以前はビジネス小説が好きでよく読んでいました。
とりわけ、金融業界のものは大好物で、ストーリーの展開とは関係なしに、データとか背景とか、そっちのほうに眼を光らせて読んでいました。
いつのまにか、読まなくなってしまいました。
事件があざとすぎる、嵌め込まれた人が気の毒でたまらない、通常の状況を書いていては前作と変わらないので、どんどんとエスカレートしていく、進化しすぎたので、わたしにはもうついていけない世界になってしまいました。
このお話しは損保の業界です。しかも、M&Aで得た外国の損保会社のお話しです。
手に入れたテキサスの損保会社がちっとも儲からない、ということで、腕利きの若手社員を派遣することにします。
テキサスの社長は、保険を再保険して、再保険先はバミューダのダミー会社、そこでばらばらにして食ってしまっています。
一番の得意先は、パナマ系のマフィアのフロント企業で、麻薬、地上げ、要するにダーティなビジネスを保険料を払うことでマネーロンダリングしています。
わからんでしょ、こういうことです。
高額の保険料を支払います。保険は再保険して、再再保険して、ばらばらにして、キックバックして、クリーンマネーに変身するわけです。
この子細を明らかにすることがストーリーで、だんだんとスキームが明らかになってくるところが面白いのです。
作者は、損保会社の取締役を経たひとで、だから、業界事情に詳しいのでしょうね。
これが日本国内のお話しなら、気の毒だとかあざといだとかで、読む気がしなくなるとこですが、外国が舞台のお話しで、そこは気の毒感は消えてしまって、ドライに読めるというものです。
前々からの癖は抜けないもので、本筋のお話しではない、ちょっとしたことを拾い出しました。
日本では労災保険は国営ですが、アメリカでは損保会社が扱います、ワークメンズ・コンプと言います。
日本の労災保険は料率が決まっているが、アメリカのワークメンズ・コンプは自由設定みたい、これはほんまかいな。
マフィアはイタリア系がアメリカ全土を仕切っているのではなく、コロンビア、パナマなど中南米のマフィアが食い込んで、カポネの時代とは大違いなんだそうな。
というわけで、このお話し、おもろい、感動の大作とまではいえないが、読んで損した、時間を返せ、などと叫ぶことはありません。
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