たまごを持つように
「たまごを持つように」まはら三桃 講談社
中学校の弓道部のおはなしです。
二年生から三年生へかけてのおはなし
どんくさいけど努力を惜しまない女の子(早弥)、天才肌でスランプにもがく女の子(実良)、父が黒人の混血の男の子(春)、主人公はこの三人です。
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一礼して、左足から。
実良の不用意な一言は、早弥にあきれた記憶をありありと思い出させた。
足の裏を見せないように、床を滑るように歩く。膝を曲げず、視線は四メートルさき。息を吸って、大きく一歩。吐いて、一歩。これは小さく。
的の前まで進んで、右側を向く。姿勢を正す。あごは引いて。的を見る。直径三十六センチ。中央に十二センチの黒丸があるが、的上ならどこに刺さっても中りとなる。的までの距離は二十八メートル。
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早弥は息をのむ。今、ぎりぎりの調和が実良の手の中で、飽和点に達しようとしていた。
つぎの瞬間、
きゃん、
ぱんっ。
二種類の音が同時に響いた。最初は金属の棒で、硬いものをたたいたような音。澄み切った音だ。それに続く乾いた破裂音。弦音と矢が的を射た音だ。
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著者は、まはら三桃、まはらみと、と読むのだそうです。なら、女性か。
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