6月に読んだ本
6月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2952ページ
刑事さん、さようなら
警察小説に、正義の警察官と悪い警察官の二種類がありますよね。これは悪い方の警察小説です。刑事が自殺したのが一件、身元不明の殺人事件が一件。埼玉県警田舎町の警察です。なにが悪い警察官か、捜査しているうち、殺人事件の犯人は自殺した警官とわかってきます。ここは隠さなきゃ、署長、課長、ホンチョウも絡めて、なかったことに、伏せることにします。悪い警察小説でも、そのまま終わるわけじゃない。意外な反撃があって、警官は復讐されることになります。陰湿な警官たちと思うでしょ。悪い警官なんですが、おもわず、応援してしまうのです
読了日:06月30日 著者:樋口 有介
お順 下 勝海舟の妹と五人の男
幕末の京都は攘夷攘夷で、象山は幕名により開国を説きに京都に行く。攘夷浪士に襲撃されて象山は亡くなってしまう。そのとき、お順は母親の病気見舞いで江戸にいた。そのまま佐久間家に帰る時機を逸してしまう。官軍の江戸攻撃、勝海舟の斡旋で無血開城となるが、反乱軍が上野にたてこもる。そのとき、屋敷を守ってくれたのが、村上俊五郎、俊五郎に島田虎之助の面影を見てイチコロとなる。俊五郎の嫁のような、情婦のような、ちゅうぶらりんの状態が続いて行く。大酒のみで女にだらしない生活能力のない人間だった。最後は海舟が離縁状を付
読了日:06月28日 著者:諸田 玲子
お順 上 勝海舟の妹と五人の男
勝麟太郎には年の離れた妹がいる、名前が順。父が勝小吉、小普請組の御家人で、小普請組とは出仕する仕事がない状態です。そこで放蕩な暮らしで過ごしております。麟太郎が通っていたのは島田虎之助道場で、お順は島田虎之助に心を奪われてしまう。それは、お順、八歳、島田虎之助、三十歳のころのお話し。お順十六、島田虎之助四十のころ、ふたりの心は通うようになっている。虎之助は結核を患い、祝言を前にして、死んでしまう。佐久間象山が麟太郎の塾をたずね、佐久間家と勝家は知り合いになる。麟太郎のすすめで、お順は佐久間象山に嫁入りする
読了日:06月24日 著者:諸田 玲子
やさぐれ
やくざの三下、使いっぱしり、まだ杯をもらっていない若者が主人公です。読み始めは、毎度おなじみのやくざ話し、ちょっと違うな、短編それぞれにゲストがいるのだ。ゲストにおかしみがあるのですよ。ゲストの毛色が変わっているから、お話しの色合いが様々で、そこがええところです。三下がいて、兄いがいて、セットでお話しが進んで行く。品川新町と品川北宿にそれぞれやくざの親分がいて、抗争を重ねている。老舗のやくざが北宿、新興のやくざが新町、三下は新町のやくざの世話になっている。やくざ立身出世物語だと思うでしょ、最終篇で堅気に戻
読了日:06月18日 著者:犬飼 六岐
蛻
尾張徳川家の江戸屋敷に町人の町があります。東海道の宿場町を模して、ざっと一町(110M)の長さで、70人の住人が住んでおります。無理に掻き集めた住人で、三年経てば、褒美の50両が貰える約束です。目的は、殿様の座興のため、将軍家や大名を接待するため。客が見物にさしかかると、立ち退きぃ、と声がかかって、全員家を空っぽにして隠れなきゃならない。蛻(もぬけ)の殻(から)、この状態から題名を思いついたのでしょうね。客は、店先や座敷を掻き回して、下々の暮らし様、商売の有り様を手に取って、バーチャル下々を堪能するわけで
読了日:06月17日 著者:犬飼 六岐
書店員の恋
書店員を題材にした小説なら、惨めな結末を迎えたり、不倫不幸になることは、ゼッタイにないとだろうと確信して手に取りました。書店員を弄ぶお話しなら、書店で邪険にされて、そもそも売ってもらえないだろう、そりゃそうですよね。書店員、不安定なコック志望の青年と恋しています。書店のセールスで、ケータイ小説の作家と知り合いました。さて、これからどうなるか、という展開ですが、これがテーマなんですね。ともだちは、結婚は愛よりも金、という立場、ヒロインは結婚は愛、という立場、結局、ともだちも愛のほうを選ぶのですね。で、どっち
読了日:06月12日 著者:梅田 みか
古道具屋 皆塵堂
古道具屋で修行を積むお話しです。主人公、古道具屋の長男は幽霊が見えるのです。次男が稼業を継いでいたが、亡くなったので、戻されてきました。ただし、他人の古道具屋で修行を積んでこい。その修業先が皆塵堂、小店で売るものは汚いものばかりで、こんなところで修行になるのか。曰くのある店で、幽霊が見えてきます。「道具屋には向かない男」「鰻の住み処」「鈍刀が切る縁」「その娘はやめておけ」「猫屋敷に棲むもの」幽霊はなしで、気味が悪いのは「鰻の住み処」夜なかに読んだのでぞっとしますね。怖いお話しだけではないのですよ
読了日:06月11日 著者:輪渡 颯介
囲碁小町 嫁入り七番勝負
薬種問屋の娘で、碁が強く、囲碁小町と呼ばれております。御典医の隠居と碁を打って、容赦ない勝ち方をしました。孫の嫁にきてほしい、囲碁の七番勝負をして、負ければ嫁に来てほしい。御典医と薬種問屋、断れば角が立つ、勝てば嫁入りの話しは流れるのだ、受けて立とう。中編小説が7本です。対戦相手はどれも段位にして上位者です。そこを互先、平手で打つのが条件です。3勝3敗、最後の章で勝負が決まります。勝ったか負けたかは語らないでおきます。囲碁の打ち方を知らないでも読めますが、そりゃぁ、知っていればより深くお話しが納得できます
読了日:06月09日 著者:犬飼 六岐
下町ロケット
ビジネス小説には、悪いやつはとことん悪くて、気の毒で読み続けられなくなるものもたくさんあります。その点、これはどこまでも希望の持てるお話し、予定調和で大団円に向かって行きますが、予定調和でなにが悪い、こういうものを求めているのです。ロケット発射が失敗して、責任を負わされて、退職して、研究者から父の町工場へ転職します。あれから十何年、町工場は高い品質で知られる会社に育っています。いやぁ、面白い。上場企業がきりきり舞いする、銀行が高姿勢から一転卑屈になる、天下の帝国重工がロケットを飛ばせなくなる。爽快なお話し
読了日:06月08日 著者:池井戸 潤
爆破屋
父親が死んで借金がしこたま残っていた。逃げ出して、アメリカへ渡った。ボブ爺と知り合った。ビルを爆破解体するプロだった。頼み込んで弟子入りした。一緒にアメリカのあちこちでビルを爆破してまわった。ほんのちょっとのスピード違反をした。無免許、速度違反、不法滞在、国外退去処分で日本へ追い返された。日本で爆破の腕を売り込んで、地上げしたビルを爆破解体する仕事にありついた。これ以上、お話しの筋書きをなぞるのは止めておきますね。おまけ、ダイナマイトは威力が強い順に「松」「桜」「榎」「梅」などの優雅なネーミングの等級に分
読了日:06月07日 著者:原 宏一
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