ドルチェ
「ドルチェ」誉田哲也 新潮社
さわやか誉田哲也と血まみれ誉田哲也、血まみれのほうです。
いや、暴力気丸出しだが、これはこれでさわやか系のほうじゃないかい。
練馬署の魚住久江巡査部長がヒロインの短編シリーズです。
警視庁捜査一課に所属していたこともあったが、志願して、所轄の刑事のほうへ変えてもらった。
本庁にいては、犯罪を追うだけだが、署にいれば犯罪を防ぐほうにちからが注げるから。
盗犯係、組織犯罪対策係、強行犯係、女ながら強行犯係を担当している。
短編集だから事件はさまざまだが、刑事の数が少ないので、だんだんと刑事の性格が浮き彫りになってくる。
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非番のはずの里谷巡査部長がそこに立っているのだった。
「誰だ、こいつは」
原口が、「捜査一課の主任ですよ」と耳打ちしたが、そもそも里谷にはそんなことを気にするタマではない。倒れて呻き声をあげる佐久間に馬乗りになり、襟首を掴んで引き寄せる。
「オメェ、何期だ」
里谷がいったのは、お前が警視庁に入庁したのは何期か、という意味である。里谷は高卒採用で、今年52歳。何をどう勘定しても、佐久間より警察官として先輩であるのは動かし難い事実だろう。
ベテランの中には、ごくたまにいるのである。階級も役職もすっ飛ばして、年功だけを理由に主従関係を成立させようとする無茶な警官が。
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警部補がブケホと呼ばれたり、刑事になるには、志願するだけじゃなれない、講習を受けてパスしなきゃなれない、そんなトリビアに詳しくなってきます。
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