さきがけものがたり
「さきがけものがたり」JSTさきがけ担当編集 アドスリー
サブタイトルに、「未来を拓く研究者たちのドラマとその舞台」
驚いたことに、日本の研究者は大多数が身分不安定です。
ポストドクターで、大学の助手=公務員になれるのは稀で、これは私立大学でも同様です。
期間限定で定員外で大学に残るか、会社であっても期間を限定されて成果を判定されるのが大多数です。
JST(独立行政法人科学技術振興機構)は「さきがけ」で募集して将来活躍できそうな研究員を選びます。
期間3年、年間1500万円の研究費でサポートします。
途中で見込みが薄いと、研究費は減額されます。
この本では、17人の研究者を語ります。それぞれ12ページ、短く語ります。
詳しく語られても、所詮は理解できません。端的に要所要所のポイントを示してくれるから面白いのです。
語り手が練達のキュレーターなので、解り易い。
研究者も17人ですが、語り手も17人で、「さきがけ」の内部者だから内容も濃いのです。
研究者の人柄、研究のポイント、学会での反響、世界的な有意性などについて語っています。
学者世界でよく言われること
ドクターは「足の裏のご飯粒」といわれる。取ったはよいが食えない。
一方で「通行手形」とも言われる。持っていないと通れない。
サラリーマン社会では、正規労働者が多く、非正規労働者は少ないのが通常です。
ところが
学者の世界では、1年毎の更新、長くて3年の期間限定が普通で、安定雇用は少数なのだそうです。
完全に成果主義の世界で、論文が書けない、ゴミの論文しか書けない研究者が大勢いるということで、驚きました。
その研究者の頭が悪いのじゃないのです、既に研究し尽くした分野を選ぶと、開拓しようもないことなのです。
常にパイオニアの分野で生きて行かなきゃならないのです。
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