小説あります
「小説あります」門井慶喜 光文社
兄弟で、弟は大企業の社長、兄は市立文学館の臨時職員、要はこの二人の抗争です。
弟は、兄に経営陣に戻ってほしい。
兄は、小説家の徳丸敬生、彼をこよなく愛し、徳丸の旧家が市立文学館になっているのだ。
けんかしよう。殴りあうのではなく、言葉でけんかしよう。
人はなぜ小説を読むのか。
弟が勝てば兄は経営陣に復帰する。兄が勝てば、弟の会社で文学館を買収する計画が進んでいるが取止めにする。
大筋の大部分は、人はなぜ小説を読むのか、について語っています。
重なり合って語られるのは、小説家の徳丸敬生。
小林多喜二の再来とまで言われ、共産党の新日本文学から出発します。
その後、文壇から隠れてしまいます。岡山の郷里へ帰っていました。
十年後、小説を書きはじめますが、がらっと別の作風に変わっています。
青木ヶ原の樹海に入って自殺してしまいます。
「おさがしの本は」ここでの主人公も「小説あります」に顔を出します。
脇役ですが、重要な役どころで出ております。
人はなぜ小説を読むのか。
文学書というより、哲学書を読んでいるようで、面白い。
人はなぜ小説を読むのか。
ここでの結論は出ていますが、それはストーリーを完結するためのものです。
途中、いくつかの仮説を提示して、兄弟で検証していく経過が、これが面白いのです。
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