うたうとは小さないのちひろいあげ
「うたうとは小さないのちひろいあげ」村上しいこ 講談社
高校に入学して、もののはずみで、うた部に入った。
まだ同好会で先輩が三人。
サブストーリーとして、中学からの友人で引きこもりがいる。
短歌甲子園に出場するのが夢、まずは県予選から。
[「髪切った?」「うん、噛み切った」歯を見せて冗談でかわす朝の下駄箱]
[髪の毛に隠していても感じてるほら耳朶も細いうなじも]
[黒髪に隠れていても日曜日あなたのためにゆれてるピアス]
[迷惑とわかっていてもしたくなるウニウニウニと猫の顔もむ]
[ごめんやで一度も見ずにごめんやで副教材の日本史資料]
[しらんがなほぼ無意識で生きてんねんなんでどうして母の追及]
[せっかくの八十五点よろこべよなぜそれを聞く平均点とか]
[過去のぼく未来のぼくが交差するこの教室から始まればよい]
[ぎこちなく肩を抱く手がふるえてるキスまでの距離あと何センチ]
[まじですか初キスのあと泣かないでまさか私のほうがいうとは]
[この想い紙飛行機にして飛ばしたよ君に届けよ不時着でいい]
[ヤギさんが森で迷って山小屋へオオカミがいてもうわやくちゃや]
[空は空海には海の青がある僕の想いに色をつけるな]
[制服の群れにまぎれて今日もまた目立たぬような雨粒になる]
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