銀二貫
「銀二貫」高田郁 幻冬舎文庫
天満の天神さんの門前で仇討ちの切りあいが始まる。仇の親は切られ、子供にまで及ぼうとしている。
待っとくんなはれ、その仇討ち、銀二貫で売っとくんなはれ。
寒天問屋井川屋の主人は思わず声をかけた。
もともと銀二貫は天満の天神さんに寄進するはずだったのだ。
銀二貫で浪人の子を買うた。あんたは丁稚や、侍の名前を捨てて、松吉と名乗るんや。
松吉は働いた。
寒天の新しい用途を開発した→羊羹。
ねっとりとした人情噺です。松竹新喜劇でもお似合いです。
心動かされます。このお話は琴線を揺るがすなぁ。
昔、NHKのテレビドラマで見た記憶があります。
店主が津川雅彦、番頭が塩見三省、少年少女は覚えていないが、ええドラマでした。
銀二貫、寄進するはずの金が流用されるのは、仇討ちを買うだけじゃないのです。
人助けのため、商売援助のため、何度も使われます。
さらに、仇討ちに投げ出した金が、意外なところで、世のため人のために使われています。
巻末で、銀二貫はきちんと無事に天満の天神さんへ寄進されます。
銀二貫は、重量にして7.5キロ、現在の貨幣価値で、2百万円から3百万円くらい。
仇討ちで命を買うとき、懐に銀二貫を麻袋に入れて腹に巻いていました。
天満の天神さんに寄進しに行くのに、風呂敷や手提げ袋で持つのではなく、懐に巻いて歩いていたのですねぇ。
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