涅槃 (下)
「涅槃 (下)」垣根涼介 朝日新聞出版
城を攻め落とされて、お福が宇喜多直家を頼ってきた。
自然に後妻に収まるのに時はかからなかった。
ねやの描写がねっとりと数ぺーじにわたって続く。
題名が「涅槃」であるのに、領内の経営の描写や領土拡張の手順も自然な筆致なのに、ねやの描写はトッテツケタように思える。
織田・豊臣・徳川ではなく、武田・上杉の名将でもなく、ただの地方領主を描く。
商家に育っただけに、武将の心得に従わず、商機・経営の心得で動く。
そのあたりは、自分の育った流域から本拠地を動かすあたりにもうかがえる。
現在の岡山市に石山城を建てた。岡山市の繁栄はここから始まった。
織田と毛利の間で、二転三転、去就を替えた。
これも商機を図ること。
一般には、裏切り・冷血の宇喜多家よ、とそしられるが、商人の領主だと考えると不思議でもない。
題名の涅槃はぴったりの題名だとは思わない。
商人の武将とか、武将ならざる武将とか、別の題名が似合っているような気がしますがね。
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