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「こちら空港警察」中山七里 角川書店
わたし、中山七里とは相性が悪いのですよ。初期の作品が気に入らなくて、ずっと避けてきました。
題名にひかれてこの本を手に取りました。
過去の悪印象とは全然違うがな。実に魅力的な警察署長だ。
ここは千葉県の成田国際空港警察署、新任の署長が赴任してきた。
さっそく管内をパトロールして、空港内までやってきた。
空港の中でも事件が起きます。違法薬物、第一話、セレブリティ。爆発物、第二話、ATB(エアターンバック)、殺人事件、第三話、イミグレーション、以下省略。
署長には相反する噂がある、魅力的な友好的な人物、血も涙もない高圧的な人物。
署長であるのに、現場の前線に出て捜査する。刑事と同じく動き回るし、自分で尋問もする。
こんな魅力的な主人公を作り出しているのです。
最終話で大どんでん返しがある。ここまでの四話はどんでん返しに導くアプローチなんです。
あの大嫌いな中山七里を見直しました。
「長篠忠義 北近江合戦心得 (三)」井原忠政 小学館文庫
大石与一郎は浅井家の家臣、今は秀吉に降って足軽としている。
なかなか足軽から取り立ててもらえない。
越前に潜入して機密情報を得た。徳川信康が武田と通じている。大賀弥四郎という重臣が武田の窓口だ。
秀吉に報告、即、信長に報告、大賀を殺せ。弓で射止めよ。
信長から反乱分子として目を付けられている。
仕留めました。やっと信長から褒められた。この功により、騎乗の身分、百貫の禄を得た。
武田が出陣し、長篠で迎え撃つ。
ここでの合戦の描写がこの本のハイライトです。
長篠の陣の功により、さらに百貫の加増、二百貫の禄を得た。馬廻り衆に加えられた。
与一郎の念願は浅井家の再興です。これは叶うのかしら。
「ヒマかっ! Get a life!」日明恩 双葉社
五話の短編集です。
日明恩は[たちもりめぐみ]と読みます。女流小説家です。
「ヒマかっ!」も「Get a life!」もそれぞれ短編の題名です。
幽霊が見える主人公、幽霊にさわれる脇役、さわれるというより殴れるのが正しい。
主人公は桧山光希、家出して、拾ってもらって、建築足場の会社にいる。
全編、幽霊のお話しなんですよ。幽霊の話なんですが、ちょっと違う。
たいがい幽霊の身の上話が語られるもんですよね。そこは少ない。
建築足場の会社の社員のお話が愉快過ぎる。魅力的なんですよ。
最終話 [Get a life!]でこれまでの四話の解決篇が語られます。
著者の出世作に消防署もの・警察署ものがあります。
建築足場の会社を含めてガテン系の世界です。
次作も、肉体派の世界が描かれることでしょうね。
「遠火 警視庁強行犯係・樋口顕」今野敏 幻冬舎
内容と題名は全然釣り合っていません。深読みしないでください。
奥多摩で事件があった。若い女の死体が全裸でシーツに包まれて遺棄されている。
ドイツ車が関係するらしい。監視カメラから渋谷が犯行現場らしいと判明した。
樋口は氏家と一緒に行動している。
被害者が未成年ということで、本庁少年係の氏家係長と一緒に行動しているのだ。
(株)ペイポリ、その中にポムというサークルがある。
ポムでの会話の中から商品化できる材料を拾ってくるのだ。
渋谷署の少年担当の中から、ポムの内部で売春のサークルがあると聞きだした。
一緒にポムに行ってみる。
目星をつけていたのが当たり。
強行犯係のお話しというより、少年係のお話しが似合っているかな。
「成瀬は天下を取りにいく」宮島未奈 新潮社
ヒロインは成瀬あかり、滋賀県大津に住んでいる。
西武デパート大津店が閉鎖になるそうだ。
成瀬は中学生、夏休みのうち、わたし、西部にずっと通う。地元番組にずっと映っていた。
島崎(島崎とは家も近所の幼馴染)、わたし、Mー1に出ようと思う。コンビを組もう。
一回戦で、意に反して落ちた。
成瀬は膳所高校に進んだ。島崎は別の高校へ。
膳所高校でかるたの部活に入った。
かるたの大会で広島県の錦木高校の男子生徒に出会った。
(今まで固有名詞は全部実在だった、錦木高校などと架空の高校なのは残念)
成瀬、初めて、好き、と打ち明けられた。
成瀬の願いは二百歳まで生きること。それと、大津にデパートを建てること。
信長の野望のように目に見える姿ではないが、この短編小説6篇の括りとして、「成瀬は天下を取りにいく」はぴったり。
ギャグ・くすぐりも満載、ヒロインの造りも突き抜けている。これはめちゃめちゃ面白いです。
「砂時計 警視庁強行犯係捜査日記」香納諒一 徳間書店
警視庁捜査一課のおじさん達です。
三つの中編、それぞれの主人公は別々です。
[砂時計][日和見係長の休日][夢去りし街角]
わたしが気に入ったのは、日和見係長の休日、自殺と処理された案件が、あれは自殺ではないと知人から指摘された。
いっぺん所轄で処理された案件をひっくり返すのは大変なことです。
本人は日和見を貫いています。それなのに、裁定を覆す方向に向かってしまう。
自殺ではなく他殺と判明しました。
本来なら、大勢を巻き込んで解明すべきですが、自分一人の手柄にしたい、そんな意欲もちらほらします。
これは日和見ではないよね、いつもの日和見からはかけ離れた行動です。
タイトル作品の[砂時計]30代女性の殺人です。結果、犯人は逮捕されますが、タイトルの砂時計、事件と砂時計とは何の関係もありません。
ただの印象風景です。
「剣、花に殉ず」木下昌輝 角川書店
雲林院(うじい)弥四郎は雲林院松軒の息子、剣の道を進むものだ。
朝鮮の剣士で朱湖固というものがいる。かって手合わせしたことがある。
直刀の苗刀を使う。みよりのものが苗刀を鍛えて弥四郎にくれた。
何年後かの次の章、弥四郎は江戸にいる。
来訪者があって、光と名乗る。幼名が光千代で、その名を呼んでくれという。
剣客仲間がいて、河原で戦って腕を磨いている。光もその稽古に混じってきた。
時は大坂冬の陣、光は豊前小倉の藩主、細川忠利として弥四郎の前に現れた。
兄の興秋は廃嫡されている。豊臣方の客将として大阪城に入っている。兄の身を守ってやってくれないか。
次の章からはキリシタンとの戦い。弥四郎は中年になっています。
この小説の大部分はキリシタンとの戦いを書いています。
そこがクライマックスなのだが、前の段取りを省くと脈絡が取れないので、あえてこういう姿で紹介します。
このあたりの道端にはコンクリートの標識杭がある。単なる市道のはずだが、○に県のマークがある。はて、県道ではないはずだがなぁ。
道端の畑をつぶして道路工事の現場事務所があったところなんだよ。ははぁ、工事が終わったから撤去したのか。
これが、今はなき、現場事務所の看板、県営広域営農団地道路整備事業 備北南部2期区間 道路第8期工事 とあるでしょ。2期だ、8期だと、長期間の工事だったのだ。
県営の工事だから、道端のコンクリート杭には○に県のマークが入っているのだな。ただの市道とは値打ちが違うぜと示しているのだね。
道を進んで春木の集落に入る。春木の集落にバリケードが施してあったのだ。その先に入って行ったら咎められてしまった。現場事務所は無人だと思っていたのに。
2台の車で挟まれて、「通行止めになっていたのを承知の上で入ったでしょ、入っちゃいけんよ」パトロールに捕まって追い返されてしまった。そんな経過があるんですよ。
ここらがそのあたり、いまはもうオッケーで通り過ぎる。
突き当たりで工事は終わっている。この先工事予定はあるのかなぁ、もうこれで終わりなのかなぁ。
振り返って、工事の出来栄えを眺めてみる。高規格の道路で、こんな工法が普通になってきたのだねぇ。
突き当たりを右に進む。藤根原の民家が固まっていて、この先の道は一挙に下り坂になってくる。ここが今日のコースの最高地点になっているのだね。
下ハンドルを握ってブレーキを利かしながら下りていく。対向車が来たり、追い越しの車が来ないことを願っております。幸い、そんな事態には遭遇しなかった。ラッキー。
ブレーキが熱を持つので、所々で休憩する。ブレーキを冷ますだけじゃない、体がコチコチになるので休みを与えないと身が持たないぞ。
川沿いのたんぼが見えてきた。やれやれ、長い下り坂を下り切ったぜ。
編集が終わりました。新しいページをアップしております。
これは一部分の抜き書き、全体の姿は下のURLからお出でください。
http://sherpaland.net/bike/2023/bike-231112-haruki_fjine/bike-231112-haruki_fjine.html
この一週間、気まずいの場面に出くわすんですよ
気まずいという言葉に接したのは、ここんとこ10年か20年
あれを気まずいと表現するのか、なるほど、気まずいとは絶妙な表現だな
当時、20年前、気まずいという言い方はまだ主流ではありませんでした
潜伏していたんですよ
誰かが気まずいと括って差し出した
お、便利じゃん、そうだよ、あれは気まずいよねぇ
一挙に世間に広まりました
マイナーからメジャーに昇格するのは素早かった
東北方言から発したのか、九州方言からか、違うな、ローカル色はないな
うまい、まずいの食品業界、料理業界からか、違うでしょう、もっと幅広だよ
気まずいの括りがなかった当時はどう扱っていたか
そういう認識がなかったからね、言うも伝えるもやり様がなかったね
「ロング・ロード 探偵・須賀大河」堂場瞬一 早川書房
ロング・ロードは Wrong Road お話しの趣旨はそういうことなんだよ。
堂場瞬一のいつもの警察小説・新聞記者小説とは一味も二味も違います。
弁護士を休業して探偵業に転じたのですよ。
警官から探偵は普通だが、弁護士から探偵とは類を見ないね。
大学同期から探偵の依頼を受けた。
巨大IT企業ZQの社長から依頼を受けた。
車内に怪文書が出回っている。犯人を捜してほしい。
社内の壁に紙が貼ってある。いずれも社長を糾弾する内容なのだ。
犯人は社外ではないな、社内にいるな。
さて、冷静になりましょう。
この探偵に感情移入できるか、あまり応援できる人物ではないな。
社長はどう、業界の偉人だそうだが、俗物だなぁ。
周辺人物はどう、脇役だが愛すべき人物がサポートしているな。
早川書房での堂場瞬一は他の出版社のものとは一味違います。
「身近な鳥のすごい巣」鈴木まもる イースト新書Q
著者は動物学者ではありません。
画家・絵本作家、山の中に住んでいるから、鳥の巣をよく見つける。
文章とイラストは自分でかく。
図鑑画も自作のもの、イラストと図鑑画は別のものだが、どちらも達者なもの。
等身大の卵の絵がある。みんな小さいのですよ。中には、鶏の卵と同じ大きさの卵がある。
動物学者なら、垂れる講釈は別のものだが、ここではひたすら鳥の巣について語っている。
鳥類学者なら生態を語り、敵や餌について語るころだが、画家だから鳥の巣にだけ目が向いている。
学者の立場では鳥の巣だけ語るのはあまりに片手落ちになりますよね。
画家ならそれでオッケー、思う存分語り明かせるというもんです。
読むほうもそれでじゅうぶん。
「ガチャガチャの経済学」小野尾勝彦 プレジデント社
筆者は日本ガチャガチャ協会の代表理事、ガチャガチャの黎明期から携わっています。
コロナ禍の中でもガチャガチャは成長しています。
アメリカも地産のガチャガチャはありますが、日本と違ってみすぼらしい。
日本には100円玉500円玉の硬貨がありますが、アメリカにはない。
25セント硬貨が最大で、1ドル硬貨さえ無いのだそうです。これではガチャガチャが成立しない。
日本も黎明期以前には怪しげな業界でした。
バンダイ、トミーが参入して以降は、一挙に刷新されました。
「コップのフチ子」で業界が変わりました。企画もの、ウケ狙いものがマーケットを得たのです。
メーカー→オペレーター→ガチャガチャマシーン、これがガチャガチャの流れです。
飲料水の自動販売機の業界と似ています。飲料水では、オペレーターでなくベンダーと呼びます。
どっちの販売店も何もせず、売り上げの分け前を受け取るだけです。
ガチャガチャの中に欲しいものがあります。うまく出るとは限りません。はずれが出る場合もあります。
外れを引いても、完成度の高いものです。誰かにプレゼントしても喜ばれます。スカがありません。
「宙(そら)わたる教室」伊与原新 文芸春秋
著者は理系の学者の出。定時制高校のことはどこで知ったんだろう。
定時制高校の先生藤竹が科学部を作ろうとする。
最初に岳人が釣れた。次にフィリピンの中年のパブのママアンジェラ、佳純はSFオタク、最後は老齢の長嶺さん、この三人で科学部を始めた。
科学部のテーマは、火星にクレーターがある。隕石が衝突してクレーターが生まれるのだ。
この火星のクレーターを地球で誕生させようとする実験なのだ。
この実験結果を学会発表するのだ。
学会とは、日本地球惑星科学連合大会、その中で高校生セッションで発表するのだ。
結果、大成功。
あとがきにある。それによると、実話を基にフィクションとして書いたのだ。
本屋大賞、直木賞を受賞しないかな、じゅうぶんイケテいると思いますよ。
「唐木田探偵社の物理的対応」似鳥鶏 角川書店
探偵ものだと思うでしょ、探し物系だと思うでしょ。大違い、毛ほどもかすっていません。
茶色の板のような月が見えてくる時代のお話しです。
化け物、夢魔、幽霊、が出てきて、人を襲います。
政府は、警察・軍隊の代わりにアウトソーシングします。
傭兵会社、警備会社、探偵社、なんでもよろし、外注します。
このお話は、探偵社の社員のお話し。
次々と化け物がわらわらと湧いてきます。
それを退治するのだが、反撃される場合もある。武運拙く死んでいく場合もある。
いえ、たいてい死んでいきます。
誰が主人公でもないんですよ。特に感情移入するべき人物もいない。
出てくる化け物、トイレのはなこさん、爆走電車、Uターンばばぁ、などなど。
ラスボスが姦姦蛇螺、死闘の末、倒します。(ネタバレごめん)
2006年11月、わたしは独自ドメインを取得しました。
その当時は、アメリカに申請して登録する仕組みでした。
某大学の建物の中にドメイン登録の本部があるということでした。
WHOIS情報の保守管理がえらく緩いのですよ。
何度もアメリカから請求のメールが来ます。入れ代わり立ち代わり違う人からメールが来ます。
[お前は俺のドメイン名を盗んでいる、一万ドル払え]
[払わなければ、お前の自宅まで取りに行く]
住所、氏名、電話番号、郵便番号、全部明細を把握しています。メールの内容に書いてあります。
おいおい。丸見えじゃないかい。
アメリカの機関のなんと保安の悪いこと。ドアの鍵、ネットのゲートウェイがゆるゆるなんじゃないの。
来るなら来い、来れるものならやって来やがれ。現実に飛行機に乗ってまで来るとは思えない。
今回のメールで、JPドメインの管理機構があるのが分かりました。
日本のドメインは日本で管理していると分かりました。
アメリカから分離独立したんでしょうね。
日本なら、WHOIS情報が漏出することはないでしょう。
東京から、大阪から、取り立てにお前の自宅まで行くぞ、と言われたら、そりゃぁ怖い。
アメリカからお前んとこに行くぞと言われても平気だけど、国内なら来るかもしれない。
日本の機関の保安管理が万全であることを願っております。
ホームページについて、プロバイダに頼らず、自分独自のドメインで運用している人向けなんですが
わたしは sherpaland.net という独自ドメインを獲得して、http://sherpaland.net/ というURLを運用しています。
メールはレンタルサーバーのバリュードメインから来ました。
JPドメインの上位機関であるJPRS(日本レジストリサービス)からの仕様変更の伝達があった、と。
それは、2023年11月13日(月)0:00までに、WHOIS情報に自分で何かを書き加えなさいとの伝達です。
それをしないと、ドメインを他社へ移管するのに支障が出るそうなのです。
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ちょっと検索して調べてみました。
最近、ドメインのハイジャックが横行しているのだそうです。
企業のホームページがハイジャックされると、企業の面目丸つぶれです。
盗まれたものを取り戻すのに多額の身代金が要求されます。
それを防ぐのに、WHOIS情報に何かを書き加えるのだそうです。
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で、わたしはどうするか。
何もしません。
このメールは[成りすまし]かもしれないと、ちょっとは疑っています。
WHOIS情報をさらすのはためらいます。
わたしはバリュードメインと契約しています。もう高齢ですから、よそへ動かす気はありません。
よそへ移す気が無ければ、WHOIS情報に書き加えなくてもOKなんじゃないの。
11月13日を待つだけです。その日が過ぎれば、ハイジャックしようにも出来なくなるとは有り難いことです。
一部、早合点、読み間違いがあるような気がしますが、まぁ、ええさ、このまま行きましょう。
「からさんの家 まひろの章」小路幸也 徳間書店
主人公は神野まひろ、複雑な生い立ちで短くは語れない。18歳。
三原伽羅、ペンネームみはらからでの、文筆家、詩人、画家。72歳。
まひろはからさんの家へ住み込みで、秘書・家政婦の仕事をすることになった。
からさんの自叙伝を、口述筆記し、リライトし、構成者として、ギャラガ支払われる。プロの入口に立ったのだ。
からさんの家の同居者は、裕子、スナックのママ、50歳。ヤマダタロウ、鉄のアーチスト、35歳。柊也、建築の大学生、23歳。
セリフはもちろん会話だが、地の文、ト書き相当部分も思いの丈を出して揺れ動く。
小説の体をなしているが、エッセイでもあり、ストーリーを語ろうとする意識が薄い。
起承転結なんてあったのかしら。最後に転結が一挙に来ます。
時間がゆっくり流れている。これは童話かも。
ここからどんなお話が紡ぎ出されると思いますか。
ちょっと重いお話し。
10月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:4411
ナイス数:129
アンリアルの感想
警官ものだと思って手を出した。スパイ小説だ。主人公はミュータント、人の眼に殺意・怒りが見える。目が赤くなる。両親は交通事故で亡くなった。犯人を捜すため警官になった。警察学校を出てすぐ、警察から政府の外郭団体に出向になった。ここはスパイ組織だと告げられた。スパイになるための訓練が始まる。外国要人のボディガードが仕事始め。お話しのメインは、人体のクローン、臓器移植のための人体増殖工場。その開発者を保護するのやら、始末するのやらが大筋。両親を殺した犯人はみつからなかったが、なぜ殺されたのか、その背景はわかった。
読了日:10月31日 著者:長浦 京
緊立ち 警視庁捜査共助課の感想
捜査共助課には二つの島がある。一つは行き詰った捜査を引き継ぐもの。もう一つは見当たり、手配写真を読み込んで雑踏の中から見当てるもの。普通、警察小説とは一つの事件を追うものが多い。これは次々とやってくる案件を捌いていくもの。そんなに短期間で片付くものではない。長い時間をかけてする仕事なのだ。左宗燈警部補は離婚の危機にあった。夫が退職して父親の介護に専念したのだ。農業も引き継いだ。見当たり班の川東小桃巡査は夫と感情が食い違って、離婚しても、と考え始める。生活のウェイトが高い警察小説なのだ。容疑者を追い詰めるの
読了日:10月28日 著者:乃南 アサ
マンション フォンティーヌの感想
二階建てで10戸のマンション、しかも中庭があって噴水がある。大家と店子のお話しだが、お話しの芯は、一つは管理人の嶌谷にまつわるお話し。もう一つはDVで夫から逃げた母子のお話し。最初に小説家の入居者でお話が始まったが、彼女は導入部分の役割みたい。管理人の過去にはヤクザ歴、刑務所歴がある。今は経歴に関係なく家主の信頼を得ている。管理人の過去に妹がいて、何十年ぶりに出会ったりする。存在感のある人物ばかりで、なかなかの味がある。無味無臭の人物もいる。一話一話の短編小説と思いきや、相互に絡み合う長編小説なのだ。。。
読了日:10月27日 著者:小路幸也
朝星夜星の感想
著者が朝井まかて、出版社がPHP、これなら間違いないと読み始めます。幕末の長崎、ゆきと丈吉は結婚した。丈吉は外国船でコックを仕込まれ、阿蘭陀総領事のもとで腕を磨いた。長崎で自由亭を開き、五代友厚の引きで大阪に転じた。ソップ、スプウン、フォルク、ボートル、ビフロース、フリット、サラド。明治時代の呼び名です、何を指しているのか想像できないものもある。妻ゆきの視線での日本最初の西洋料理店主、草野丈吉の一代記です。亭主はホテルも営業して立派な実業家ですが、下半身にだらしないところがあって玉に瑕なところがあります
読了日:10月24日 著者:朝井 まかて
動物たちは何をしゃべっているのか?の感想
山極寿一は京大のゴリラ界の権威。鈴木俊貴は東大の准教授で新分野を開拓。ふたりの対談。山極はゴリラの会話が分かる。鈴木はシジュウカラの会話が分かる。どちらもサバンナのような平原で暮らしているのではない。ゴリラもシジュウカラも森林草藪のなかで生活しているのだ。見えるものより、耳での情報が発達して当然だ。異種の鳥もシジュウカラの声に聴き耳を立てている。異種の鳥類も近隣種の鳴き声を理解できるのだ。お話は動物から人類の会話に移って行く。人類は文字を発明したことで、文字では表現できないものを切り捨ててきたのではないか
読了日:10月21日 著者:山極 寿一,鈴木 俊貴
縁切り上等! 離婚弁護士 松岡紬の事件ファイルの感想
鎌倉に縁切り寺の東慶寺があります。それを雛型にしてます。ここは東衛寺、縁切寺として名高い。父親は元住職、長男に住職を譲って、まぁ、ぶらぶら。娘がいて、司法試験に合格、寺の境内の蔵を弁護士事務所にしている。環境に合わせて、弁護士としても主な仕事は離婚を扱っている。離婚の依頼者を事務員に採用したり、幼いころ、母親が離婚して出て行ったり、いろいろです。五篇の離婚話。中には同性結婚で、浮気したから離婚したい、と言う案件があったり、こんなのどうするんんでしょうね。ふと思ったんだが、あんまり収入にはならないんじゃない
読了日:10月16日 著者:新川 帆立
虚の聖域 梓凪子の調査報告書の感想
ヒロインは梓凪子、元警察官で今は探偵をしている。姉の息子が亡くなった。ビルからの飛び降りで、状況は自殺が疑われる。姉の依頼で調査することになった。最初は、読むのに乗り気じゃなかったのですよ。なんだ、ヒステリーの姉、シングルマザーの過剰な愛情、そんなお話しだろうと、読む気がしませんでした。調べると、これは自殺じゃないぞ。他殺かもしれない。パイのように何層にも重なっていて、次々に新展開が現れる。退屈な最初から、一挙に緊迫してくる。自殺を疑われたが、そういうことだったのかい。ばらのまち福山ミステリー文学新人賞の
読了日:10月14日 著者:松嶋 智左
絶対聖域 刑事花房京子の感想
倒叙ミステリーです。犯人は最初から分かっています。それじゃぁつまらんだろう。はい、最初の部分は面白くない。刑務所内で、演歌歌手の慰問が行われます。一般公開の中に模範囚が一般人に混じって観覧する。その混雑の中で殺人が行われます。被害者は出所した元受刑者、加害者は刑務所長。刑事花房京子が食らいつきます。動機は何だ。読者には犯人は分かっているので、動機が何かが問われます。犯人のほころびがあって、犯人までたどり着きます。このシリーズ、三冊出ているのだそうです。倒叙ミステリー、面白いかと聞かれると、先に犯人が分かっ
読了日:10月12日 著者:香納 諒一
ショート・セール (文芸書・小説)の感想
「株主は会社の将来を期待して株を持つんじゃない、短期間でいかに高リターンを得られるか、関心はそのひとつしかない。」オリエンタル自動車が狙われている。投資ファンドのマッケンジーはオリエンタルに目を付けた。中国の不動産会社とタイアップして、会社を中国に売りつけ、株式が高値のところで売り抜ける算段なのだ。ウシジマ・ヒクマという投資ファンドがある。これはエンジェルの立場、ハゲタカファンドに鉄槌を下すつもりなのだ。真山仁の「ハゲタカ」、楡周平の初期の「Cの福音」朝倉恭介VS川瀬雅彦のシリーズのテイストが味わえる。。
読了日:10月09日 著者:楡周平
天災ものがたりの感想
どれも災難のお話しです。○一国の領主 天文11年 ○漁師 明治29年 ○人身売買商 寛起2年 ○除灰作業員 宝永4年 ○囚人 明暦3年 ○小学校教師 昭和38年 洪水、津波、飢饉、富士山噴火、江戸の大火事、豪雪。被災者を描いたお話しです。中には、起承転結を踏まずに、転で止まって結を書いてないお話もある。除灰作業員が題名だが、灰除け忍足と当時の名前で呼んでほしい題名もある。どのお話しも切ないなぁ。でも、切ないままではなく、その先の続きがあるところがええよなぁ。サブストーリーが効いています。信玄堤 キリシタン
読了日:10月06日 著者:門井 慶喜
流警 傘見警部交番事件ファイル (集英社文庫)の感想
南優月巡査長は傘見警部交番に配属になった。コンビニ強盗を逮捕したが護送中に交通事故を起こして逃走を許してしまったのだ、その懲罰が捜査一課から交番勤務となったわけだ。榎木孔泉警視正が傘見交番に配属になった。殺人事件が発生した。傘見一番の富豪、作倉実阿子が殺害された。関係者は、夫の春義、娘の邦穂、母親の阿きを、阿きをは老人ホームに入居中なのだ。本線の殺人事件の他に些細な詐欺事件などが暇ネタで流れる。著者は警察に勤務歴がある。警官が不倫をすると、依願退職に持っていかれる。敬礼に、室内での敬礼がある。こういうのは
読了日:10月05日 著者:松嶋 智左
三河雑兵心得 【十二】-小田原仁義 (双葉文庫 い 56-13)の感想
徳川家家中での植田茂兵衛の立身出世物語です。小田原の北条家討伐で家康は先鋒をいいつかった。初戦は箱根山腹の山中城、撃破して次は伊豆の韮山城。茂兵衛の視点で書かれているから、小田原城、関東一円の戦線などは書かれていない。出城の攻防について、かなり細かく書き込まれている。小田原城は降伏した。徳川家康は旧地を返上して、関東一円を所領にたまわった。大物の武将には何十万石・何万石が与えられるが、茂兵衛にはいくらなのか、そこは書いてない。このへんは、NHKどうする家康と同時期なので、読んでいて、武将の顔が役者の顔で現
読了日:10月04日 著者:井原 忠政
鷹の惑いの感想
公安一課、管理官の海老沢、極左の幹部が仙台で逮捕された。護送するため仙台に出張した。新幹線の中で服毒自殺で死んでしまった。捜査一課、管理官の高峰、他殺事件を捜査していた。被害者の経歴にには代議士秘書の経歴がある。捜査するうち、被害者の過去に極左の経歴があるのが分かってきた。高峰は海老沢にタイアップを申し出た。二人は警察同期なのだ。この先はネタバレになるから語れない。題名が鷹の惑い、鷹とは公安を意味する。もう極左など社会に何の影響も及ぼさない。対象が消滅すると、公安一課の存立基盤がなくなってくる。それが惑い
読了日:10月02日 著者:堂場 瞬一
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