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「荒れ地の種」江上剛 光文社
ある日海を見つめる中年の男の姿がニュースで流れた。
東日本震災で、津波に流され原発核汚染を受けたまま、造り酒屋を復興できていない男の姿だった。
この映像は日本各地で反応を示した。
A大学に通う高城浩紀は、その男矢吹光に弟子入りを願い出た。酒の銘柄は福の寿。
広告会社に勤める星野真由美は生家の造り酒屋を受け継ぐ決心をした。会社を辞めて家に戻った。酒の銘柄は会津誉。
別に、廃業を決意しようとしている酒蔵がある、酒の銘柄は磐梯栄。
高城浩紀の知り合いが酒蔵を買い取った。酒の醸造は続けられることになった。
ニュース映像を見た幾人かの転機になった。
物語は、福の寿の醸造を会津誉の酒蔵で始めるところから始まる。
実話に基づくフィクションのお話しです。
東京電力が東亜電力になったり、浪江町が荒波町に変わったり、フィクション化しています。
国宝というからには、日本産のものばかりと思ってましたが
中国伝来の品々が国宝に含まれています
正倉院のシルクロードからの伝来品は、そりゃもう、国宝 と納得できます
南宋の画家、牧谿=もっけい、13世紀の人物、絵は中国にも欧米にもなく、日本にのみ存在します
曜変天目茶碗も中国産だが、日本にだけ存在します
こういう状態なら国宝と銘打っても問題ないかな
筆跡・典籍では、その種のものが日本になんぼでもあります
日本にあるのに、母国に存在しないとは、どういうこっちゃ
輸入品・伝来品も国宝になるんですね
中国・韓国にしてみれば、おれんちのものが日本の国宝とは
一言物申したいところでしょうね
だけど、なんと切り出せばええのか、言葉に詰まるところでしょうね
こういった国宝を中国・韓国の博物館に貸し出すと
返してくれる保証はありません だから、貸し出してはいけません
中国・韓国の人々が見たければ、日本の博物館に来て鑑賞してもらう、これしかありません
トランプがウクライナとロシアを停戦させると高言しています
わたしも、現状の戦線で領土分割して停戦になるだろうと思います
もともと焦点になっている国土は、フルシチョフがソ連からウクライナに領土を移譲したものです
フルシチョフの奥さんはウクライナ人でした、それが移譲の理由の一つかな
当時はソビエト連邦内のことで、領土内での移譲は何の問題もありませんでした
次のエリツイン大統領の時、ソビエト連邦は分裂して、ウクライナやロシア連邦が誕生しました
日本でも、長野県の木曽の一部が岐阜県に移譲されたことがあります(馬籠宿)
長野県は戦にかけてでも取り戻すとは言っていません、これはちょっと話が違うか
プーチンはフルシチョフのチョンボを取り戻そうとしているのです
ウクライナのゼレンスキー大統領としても、しょうがないな、と割り切るところはあろうかと思います
フルシチョフのタナボタで得た領土です、振出しに戻る、これが落としどころじゃないでしょうか
「ブラックリスト 警視庁観察ファイル」伊兼源太郎 実業之日本社
佐良は人事一課に異動して二年になる。今度皆口も異動してきた。監察の仕事なのだ。
警視庁捜査二課で手を焼いている案件がある。
手伝うことになった。
特殊詐欺でハングレがリストに上がっている。そのリストが漏洩しているようなのだ。
漏洩なら監察の対象になる。佐良、皆口に毛利が加わって観察に当たることになった。
リストにあるハングレが次々に殺されていく。
私的制裁ではなかろうか。
調べて行くうち、互助会があると分かってきた。
検挙しても、短い刑期で出て行く、犯罪と刑期が見合っていない。
警官の互助会で犯罪に見合う報いを与えてやろう。
そういう意図で互助会は始まった。
「密告はうたう」伊兼源太郎 実業之日本社
マルタイを識張り中に斎藤は撃ち殺された。現場にいたのは他に佐良と皆口だけだった。
皆口は運転免許試験場に、佐良は本庁人事一課に転勤になった。
人事に密告の投書があった。皆口が免許証データを漏洩している。
佐良が担当になった。
警務部人事一課の仕事は行確=行動確認、尾行して監視して行動を探る。
暗い単独の任務で、読んでいても鬱陶しい。
人事一課は警部以上が範囲、皆口は巡査部長、外れているじゃないか。
いや、張っているうちに署長が監視下に入ってきた。
最後に、思いがけない乱闘があって、今までのじめっとした展開から開けてくる。
うたうとは、自白すること、あるいは、密告すること。
警視庁鑑識ファイルというシリーズの初篇です。
「バリ山行」松永K三蔵 講談社
芥川賞受賞作で、山行の小説です。わたし、山岳小説から離れて久しいなぁ。
主人公は波多(はた)、ごく普通のハイカーだ。
関わる人は妻鹿(めが)、妻鹿はバリ山行をやっているのだ。
バリ山行とはバリエーション山行、同じ六甲山を歩いても、ヤブや崖を歩くのだ。
会社は建設会社なのだが、社長の方針で大手の完全下請けに転換しようとしている。
見込みと違って、受注は伸びず、人員整理の噂も出ている。
波多は妻鹿に頼み込んで、バリ山行に連れて行ってくださいと願い出た。
ついていってみると、予想以上の難路だった。
著者は、谷を峪と書く、妻鹿の持ち道具にパラクラバ、チェーンスパイク、大きなマイナスドライバーなどがある。
知らん道具だなぁ。
わたしの経験したヤブコギとは大違い、命を的に賭ける大博打山行なのだ、並みのハイカーには。妻鹿にはこれが通常。
並行して語られる会社の難儀、退職勧告もありうる、こっちも大博打なのだ。
起承転結の起承まで、ここまで紹介しました。あとは自分で読んでね。
「アーセナルにおいでよ」あさのあつこ 水鈴社
読みたくなったキッカケは、BSテレビ東京の[あの本、読みました?]でのお薦めのもの。
あたし川相千香、幼稚園から中一まで幼な馴染の芳竹甲斐、プラス稲作陽太、古藤里佳子。
甲斐くんから誘われた。俺たち起業するんだ。一緒にやらない?
アーセナルという名前の会社なんだよ。
どうやら子供の居場所を作るのが会社の目的らしい。
あさのあつこのスポーツもの、時代小説ものとは違う流れだ。
出資者を募ったり、具体的な活動に入ったり、けっこうビジネス小説の流れになっている。
経済誌の出版社が出した本のように見える。起業の段取り、ツボを押さえている。ほほう、起業とはこのようにやるのか。
例えば、先天性、後天性、これは中国古来の表現なのか和製漢語なのか、どっち、判断に困ります。
和製漢語には、幕末明治に新しく編み出した和製漢語もあるし、中国古来のものを換骨奪胎して再生させたものもあります。
現代の文章の中でどれが中国古来でどれが和製漢語なのか教えてほしい。
辞書に、中国古来、和製漢語、と区別して書き分けてないから、付け加えてよ。
例示した、先天性、後天性、中国古来か和製漢字か、どっちなんでしょうね。
天と示しているから中国古来のような気がするし、抽象的だから和製漢語とも思えるし。
まぁ、大雑把に言えば、○○性、××的、反△△、こういったものは和製漢語ですよね。
たいていの肝心かなめの要素を和製漢語で占められて、中国人にしてみると、歯噛みするほど悔しいところなんだそうです。
中華人民共和国、中国共産党、この中で中国古来なのは、中華、国、中国、これだけ、残りは和製漢語だものね。
「抹殺」柴田哲孝 光文社
南スーダンでは大統領派と副大統領派の争いで内乱状態だった。
某ホテルからSOSが出た。大統領派の親衛隊によって制圧された。暴行・略奪・強姦が横行した。
どこの大使館も手が出せなかった。
日本大使館からの依頼で陸上自衛隊PKO部隊に救出依頼があった。”五班”を出動させた。
国境なき医師団の長谷川麻衣子医師を救出した。
このことは一切報道されなかった。
数年後、帰国した”五班”のメンバーは一部が除隊した。空気が悪くなったからだ。
除隊した隊員が順番に殺されていく。
残った三人は真相を探り始めた。
長谷川麻衣子は日米の二重国籍だった。
アメリカの軍隊はアメリカ国籍の市民を守らなかった。これは隠していたい。
この事実を知る自衛隊員を抹殺するよう、元海兵隊員で組織する軍事会社に発注があった。
戦いが始まる。ここからが面白くなる。
「ナカスイ!海なし県の水産列車」村崎なぎこ
[ナカスイ!海なし県の水産高校][ナカスイ!海なし県の海洋実習]の続編
初作は2024年1月、次作も2024年1月に読んだ。今2024年12月、早書きの作者なんだな。
舞台は栃木県の那珂川水産高校。
戯文です。あざといくらい、くすぐり・挑発が織り込んであります。
希望の職業は船舶の司厨員、東京水産船舶大学を志望します。
一般入試では無理だから、推薦入試を目指します。
生徒会会長だから、それを生かして、生徒会主催の烏山線でのイベントを企画します。
レストラン列車を企画します。それが題名の水産列車、那珂川水産高校の食材で埋め尽くします。
ギャル語豊富だから作者は若いと思うでしょ、1971年生まれ、ベテランです。
盛り上げる手管は豊富だし、予想を裏切る展開だし、若いカケダシとは大違いです。
ラノベだけれど、ツボを押さえて面白さ満載です。
「PIT 特殊心理捜査班 蒼井俊」五十嵐貴久 光文社
警視庁警官の蒼井俊は同僚の水無月玲に刺されて、精髄損傷による四肢麻痺で動けなくなった。
蒼井俊を中心に[PIT 特殊心理捜査班]が編成された。Psychology Investigation Team
ネットでの炎上は制裁に向かう。
国会議員で裏金作りで逮捕をまぬかれた佐山が殺された。
水無月玲は、贖罪のためか、蒼井俊にネットで接触してくる。
次に殺されそうな対象者が浮かび上がってきた。
ヒーローは、四肢損傷者で肉体的には動けず頭脳だけで判断することになります。
どうも感情移入できない。
同僚?上司もいっぱい出てくるが、印象に残らない。書き分けていないのだ。
最初から面白くなくて、この先も面白くなりそうな気配がない。
どうやら、このシリーズで続けようとしているのでしょうが、それはどうかな。
11月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:3456
ナイス数:86下町サイキックの感想
サイキックとは、テレパシーや透視力を意味する言葉。キヨカは中学生かな。下町の路地裏で母と暮らしている。キヨカには黒い霞が見えるのだ。人間に色が付いているのも見える。あぁ、この人はそういう人だと分かるのだ。初出は、https://note.com/ に掲載されたものを書籍化したもの。わたし、この本を初めて読むはずだ。2024年7月発行。ところどころ読んだ記憶があるんですよ。note.com から転載されて、どこかのネットで読んだのかしら。ずっと通して、じゃないのです。飛び飛びにここは読んだ、知っている。読み
読了日:11月29日 著者:吉本 ばなな
綱を引くの感想
東京蒲田の綱引きのチームです。チーム名はブルスターズ。大勢で引くお祭りの綱引きじゃない、8人対8人の競技綱引きなのだ。たまたまアイルランドからの留学生がチームに近寄ってきた。彼もアイルランドの強豪チームの一員なのだ。参加したいということで、チームのみんなに召集をかけた。コロナで休んでいるうちに弱くなっていた。ここから発奮が始まるのです。腰を痛めた真島は引退を決める。娘が離婚して帰って来たので、監督をお願いした。浜松の綱引きチームにいて、全国女子優勝チームのメンバーだったのだ。若いメンバーの募集を始める。。
読了日:11月28日 著者:堂場 瞬一
またうどの感想
[まいまいつぶろ][御庭番耳目抄]から派生したスピンオフ。全部幻冬舎刊。田沼意次は徳川家重の小姓についた。家重から次代の家治に転勤となった。その時、家重は田沼意次のことを「またうど」全き人、愚直なまでに正直な信(まこと)の人という意味。第十代徳川家治についてからは、御用人、老中格から老中へと進み、五万七千国の大名になった。幕政は、印旛沼干拓、蝦夷地開発、貸金会所、最後のはファンドを意味する。政敵は松平白河侯、賄賂政治と非難をし、息子意知は江戸城殿中で殺される。将軍逝去にあたり、老中を退く。結局最後は一万石
読了日:11月27日 著者:村木 嵐
五葉のまつりの感想
まつり五件ということ。序の16頁に五奉行の一覧表が出ている、ここに栞を挟んでおいて。北野大茶会、刀狩り、太閤検地、大瓜畑遊び、醍醐の花見、戦ではなくイベントだ。戦ではないが、節目節目を固めるイベントだ。奉行にとっては戦と同じ、必ず勝利を挙げねばならない。刀狩りは九州肥後での実験、全国的に刀狩を実施する前のテストケースだ。太閤検地は伊達政宗を相手にテストケース、ここで成功すれば全国で実施できる。豊臣の五奉行とはいえ、各自の人柄をよく知るわけでない。この作品では、五奉行それぞれが、出自から担当分野まで全部明ら
読了日:11月19日 著者:今村 翔吾
準平原の謎 盆地は海から生まれたの感想
表紙カバーの袖に、【隆起準平原信じられていた中国地方の吉備高原。吉備高原より一段低い、真っ平らな世羅台地。さらに低い、瀬戸内海の侵食小起伏地形。】以下省略 地図と図表が豊富な本です。北海道や東北など、自分が行ったこともない場所のページは飛ばしましょう。自分のよく知っている場所・地方のところだけつまみ食いしましょう。自分で実地に歩いた山域・自転車で走った地点ならとてもよく分かります。そういう読み方をしましょう。世界的な権威であるデービスが準平原と言う概念を打ち出しました。違うんじゃないかい。高橋雅紀はそう言
読了日:11月17日 著者:高橋 雅紀
ポップ・フィクションの感想
主人公は松川腫喜、実在の人物か架空の人物か。松川は市民公論に入社した。主幹は緑岡、モデルは滝田樗陰。論争で主幹緑岡を殴ったということで、松川は退社する。次に入社するのが文学四季、代表は菊谷、当然モデルは文芸春秋、菊池寛を指している。作家の起用について意見の相違あり、また退社する。今度は講談社に入社する。エースという雑誌を創刊するのだ。実名はキング。ここで150万冊という販売記録を立てた。三社、三誌とも時代が違う。大正から昭和恐慌まで時代に差がある。舞台回しに松川と言う人物を立ててはいるが、架空の人物でしょ
読了日:11月14日 著者:堂場 瞬一
共犯の畔の感想
群馬県にやんばダムがあります。ダム計画があったが、コンクリからひとへ、民主党政権は計画を中止しました。自公政権の下で再びダム計画は蘇り、完成しました。これを下敷きにこの小説は書かれました。畔はほとりと読みます。ダム建設反対派の群像を描いてあります。只今現在の事件は、13年前に原因あり、33年前に原因あり。33年前の事件、13年前の事件は白黒映画の印象です。重く暗い。現在の事件になると、カラー映像になります。なんぼカラーでも、遠因は前の事件を引きずっている。カタルシスが出来たような、そういう訳でないような。
読了日:11月10日 著者:真保 裕一
名探偵のままでいて (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)の感想
祖父は小学校の校長先生でした。今はレビー小体型認知症を患っています。安楽椅子探偵というジャンルがあります。困ったときには相談する。短編集ですがね、前半・中間は古いトリックの探偵小説なんですよ。エドガ・アラン・ポー、エラリー・クイーン、アガサ・クリスティ、ディクスン・カー 密室トリック、人間消失、人が増えてる、えらく古臭いスタイルだなぁ。末端の5章、終章でころっと活気が戻ってきます。同僚の教師、自分自身が狙われる、被害者になる。やっと血沸き肉躍る展開になってきました。もちろん、おじいちゃんが解決するのです。
読了日:11月06日 著者:小西マサテル
コンタミ 科学汚染 (講談社文庫 い 137-2)の感想
主人公は宇賀神、慶成大学の准教授、ホームズに対応するワトソン役に、大学院生の町村圭。宇賀神の同門同級に美冬がいる。何度も振られているのだ。VEDYという深海酵母の会社がある。ガンに効くと、非科学の極みなのに科学の装いで稼いでいるのだ。患者は科学にすがるのではない。何かに希望を託すのだ。そににつけこむのが詐欺師の手口なのだ。これは冷静なお話しです。語り口です。著者は理系の大学を出て大学の研究者を務めた経歴があります。論文発表の段取りなど、ほとんどの人が知らないことを教わると、先へ先へと読みたくなるもんです。
読了日:11月03日 著者:伊与原 新
読書メーター
「鷹の飛翔」堂場瞬一 講談社
[鷹の系譜][鷹の惑い]に続く鷹のシリーズです。
同じ大学警察同期の海老沢と高峰、海老沢は公安一課育ち、現在は目黒中央署長。高峰は本庁捜査一課の理事官。
共に来年は定年を迎える。
目黒中央署管内で殺人があった。
殺されたのは元過激派、犯人の目星も着いた。
25年前に六本木飛翔事件があって、飛翔体が撃ち込まれ、通行人がケガをした。
革連協のメンバーの八田が逮捕され、刑務所に入った。
目黒の殺人は連続殺人で、全員、旧革連協のメンバーのだった。
八田は指名手配された。
目黒の政治家を殺すと脅迫があった。
これ以上は筋書きは語らない。
公安に未来はあるのか。取り締まり対象の新左翼はもういない。
存在意義はあるのか。脱皮して、公安から非公安に転身しないと未来がない。
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