「極楽征夷大将軍」垣根涼介 文芸春秋
鎌倉幕府の終わり、足利高氏(尊氏)足利高国(直義)高師直、この三者の物語です。
後醍醐天皇の命によって周囲を斬り従えた。
当初はお褒めに預かったが、朝敵となった。
脇役に、赤松円心、楠木正成、新田義貞、北畠親房。
兄は極楽者、なんにも考えてはおらぬ。
弟は切れ者、政庁の屋台骨は弟が支えている。
足利家家宰の高師直は戦下手、軍事面はからっきしで、政務にのみ適している。
室町幕府の始まりをわたしは知らんのです。
この本で、そういう成り立ち・経過で始まったのかと理解が及びました。
さて、四つに分かれた最終章で始まるストーリーには触れずにおきますね。
最初から半ばごろまで、トントンと読み進められます。
後醍醐天皇方の負けが濃厚になったころから、読み進めるのが苦痛になってくる。
歴史の事態は変えようがないので、筆力もそこはしょうがないのでしょうね。
「無人島、研究と冒険、半分半分。」川上和人 東京書籍
前に読んだ本に「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」があって
川上和人は面白いと深く印象付けられました。
著者は現在50歳くらい。
この本で、南硫黄島を探検していますが、それは30歳くらいのころ。
まだ研究者若手のころです。
実は、40歳のころ、再び南硫黄島を探査しています。
最初は下っ端、今度は研究コーディネーターという役目を帯びている。
50歳の今では、現場に出るのは若手に譲らなきゃならないかどうか。
筆致が多彩。テレビバラエティの構成作家もできるんじゃないか、ギャグとくすぐりに満ちています。
鳥類学者だから本筋を外してはいませんが、ひたすら本筋ばっかりでは飽きてしまう。
かなり頻繁にギャグとシャレを交えています。
東大、東大大学院を経て、森林総合研究所鳥獣生態研究室長。
大学以外でも研究者の道はあるのだ。
「百鬼大乱」新保雄一 講談社
とても読みにくい小説です。
主人公は太田資長、幼名は源六、後世、道灌の名前で知られています。
足利幕府のころ、関東には鎌倉公方がいて、さらに関東管領がいます。
両社は勢力争いを重ね、鎌倉は焼け、古河に移って古河公方と称します。
鎌倉公方・古河公方は奉公衆に支えられ、奉公衆の巨魁は簗田持助です。
関東管領は上杉、太田の家は管領方に所属します。
ここまでが半分。
前半分は父太田資清が主人公、後半分は子太田資長、出家後の名前は道灌。
京都は応仁の乱で、関東の混乱を仲裁する手はない。
太田資長は手を尽くして、上杉管領が関東を掌握するまでに至った。
世の中、ねたみ、そねみ、面子というものがあります。
あまりに功ありて、暗殺されます。
読み終わって脱力感、今まで読むのに苦労したのはなんだったんだろう。
「霜月記」砂原浩太朗 講談社
ご存じ神山藩のことです。
草壁聡次郎、まだ18歳の身ながら家職の町奉行を拝命する。
父藤右衛門は家督相続・隠居願いを提出したまま出奔してしまった。
聡次郎は料理屋賢木に寓居する、祖父左太夫に相談した。
町奉行に就任して、町人が殺される事件があった。
死者は豪商信濃屋の三番番頭だった。
ここから町奉行の詮議が始まる。
時の筆頭家老は佐久間隼人正、政変を経て筆頭家老に就任したのだ。
詮議の末、家老を追い落とした。
この家老は第一作・第二作での家老ではない。
何度も政変があった藩なのだ。
四作目、五作目と海山藩シリーズは続くだろうが、これからも何度も何度も政変があると思いますよ。
神山藩は日本海に面する藩、城と港とのは一日がかりの行程がある藩なのだ。
楷書の小説で、エロな場面やほれたはれたのお話はでてきません。
場面場面での語り出しが誰のことか分からなくても、追々分かってくる語り口で、時々、迷う。
「マル暴ディーヴァ」今野敏 実業之日本社
前々作「マル暴甘糟」前作「マル暴総監」の発展版です。
甘糟は巡査部長暴対係、総監とは警視総監です。総監は夜の見回り(お前は遠山の金さんか)をやっている。
ヤクザのフロントが絡むヘロインの摘発事件です。
他に出るのは、元警視監、ジャズクラブのマスター、現役の警視正、趣味でジャズシンガーをやっている。
もちろん薬物の摘発はみごとに逮捕に至りますよ。
設定がこんなに飛び跳ねた設定ですもの、シリアスな小説ではありません。
くすぐりのキーがあちこちに転がっています。
そのキーを踏んで、ほら、くすっと笑った。またくすぐりの仕掛けに引っ掛かった。
ディーヴァとは何かをこの本では明かしていません。
オペラ業界では歌姫なんだそうです。
ジャズシンガー、彼女を歌姫とほめたたえているわけです。
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